過去ログ:

世界医師会(WMA)の主な宣言

  1. ジュネーブ宣言
  2. 医の倫理の国際綱領
  3. ヘルシンキ宣言
  4. 患者の権利に関するリスボン宣言

1. ジュネーブ宣言

  • 1948年9月スイス,ジュネーブにおける第2回WMA総会で採択
  • 1968年8月オーストラリア,シドニーにおける第22回WMA総会で修正
  • 1983年10月イタリア,ベニスにおける第35回WMA総会で修正
  • 1994年9月スウェーデン,ストックホルムにおける第46回WMA総会で修正
  • 医師の一人として参加するに際し,
  • ・ 私は,人類への奉仕に自分の人生を捧げることを厳粛に警う.
  • ・ 私は,私の教師に,当然受けるべきである尊敬と感謝の念を捧げる.
  • ・ 私は,良心と尊厳をもって私の専門職を実践する.
  • ・ 私の患者の健康を私の第一の関心事とする.
  • ・ 私は,私への信頼のゆえに知り得た患者の秘密を,たとえその死後においても尊重する.
  • ・ 私は,全力を尽くして医師専門職の名誉と高貴なる伝統を保持する.
  • ・ 私の同僚は,私の兄弟姉妹である.
  • ・ 私は,私の医師としての職責と患者との間に,年齢,疾病や障害,信条,民族的起源,ジェンダー,国籍,所属政治団体,人種,性的オリエンテーション,或は,社会的地位といった事がらの配慮が介在することを容認しない.
  • ・ 私は,たとえいかなる脅迫があろうと,生命の始まりから人命を最大限に尊重し続ける.また,人間性の法理に反して医学の知識を用いることはしない.
  • ・ 私は,自由に名誉にかけてこれらのことを厳粛に誓う.

2. 医の倫理の国際綱領 (ロンドンにて1949年採択、'68,'83修正)

  • 1949年10月英国,ロンドンにおける第3回WMA総会で採択
  • 1968年8月オーストラリア,シドニーにおける第22回WMA絵会で修正
  • 1983年10月イタリア,ベニスにおける第35回WMA絵会で修正
  • ・ 医師の一般的な義務
  • ・ 医師は,常に専門職としての行為の最高の水準を維持しなければならない.
  • ・ 医師は,患者の立場に立って,営利に影響されることなく,自由にかつ独立して専門職としての行為を行うべきである.
  • ・ 医師は,すべての医療行為において,人間の尊厳に対する共感と尊敬の念をもって,十分な技術的・道徳的独立性により,適切な医療の提供に献身すべきである.
  • ・ 医師は,患者や同僚医師を誠実に扱い,人格や能力に欠陥があったり,欺まん,またはごまかしをするような医師の摘発に努めるべきである.
    次の行為は,反倫理的行為とみなされる.
    1. a)自国の法律及び医師会の医の倫理基準に認められている以外の,医師による自己宣伝・広告になるような行為
    2. b)患者の紹介や,患者をなんらかの機関に斡旋したり,紹介したりするだけのために金銭やその他の報酬を授受すること.
  • ・ 医師は,患者,同僚医師,他の医療従事者の権利を尊重し,そして患者の信頼を守るべきである.
  • ・ 医師は,患者の身体的及び精神的な状態を弱める影響をもつ可能性のある医療に際しては,患者の利益のためにのみ行動すべきである.
  • ・ 医師は,発見や新しい技術や,非専門職関係による治療に対しては,非常に慎重であるべきである.
  • ・ 医師は,自らが検証したものについてのみ,保証すべきである.
  • 病人に対する医師の義務
  • ・ 医師は,常に人命保護の責務を心に銘記すべきてある.
  • ・ 医師は,患者に対し誠実を尽くし,自己の全技能を注ぐべきである.診療や治療に当り,自己の能力が及ばないと思うときは,必要な能力のある他の医師に依頼するよう努めるべきである.
  • ・ 医師は,患者について知り得たすべての秘密は,患者の死後においても絶対に守るべきである.
  • ・ 医師は,他の医師が進んで緊急医療を行なうことができないと確信する場合には,人道主義の立場から緊急医療を行なうべきである.
  • 医師相互の義務
  • ・ 医師は,同僚医師が自分に対してとってもらいたいのと同じような態度を,同僚医師に対してとるべきである.
  • ・ 医師は,同僚医師の患者を引き抜くべきではない.
  • ・ 医師は,世界医師会が承認した「ジュネーブ宣言」の趣旨を守るべきである.

3. ヘルシンキ宣言

1964年 ヘルシンキ(フィンランド)における世界医師会総会にて採択
1975年 東京(日本)にて改定
1983年 ベニス(イタリー)にて改定
1989年 香港にて改定
1996年 サマーセットウエスト(南アフリカ)にて改定
2000年 エジンバラ(スコットランド)にて改定

A. 序言

  1. 世界医師会は,このヘルシンキ宣言を策定し,ヒトを対象とした研究に携わる医師,その他の関係者に対して,倫理的原則を示してきた。ここで述べる,ヒトを対象とした医学研究には,誰のものか明らかなヒト組織や誰のものか明らかなデータも含まれる。
  2. 人々の健康を増進させ,これを守ることは医師の使命である。医師の知識や判断力は,この医師の使命を遂行するために駆使されねばならない。
  3. 世界医師会のジュネーブ宣言では,「医師たる者は患者の健康を第一に考えるべきである」という言葉や医療倫理に関する国際綱領「患者の身体的,精神的状況が医療によって悪化されるような場合でも医師は患者のためのみを考えて行動すべきである」という宣言を守るべきであるとしている。
  4. 医学の進歩は,結局は,その一部は,ヒトを対象とした研究の成果に依拠せざるを得ない。
  5. ヒトを対象とした医学研究においては,科学や社会のためよりも,ヒトの幸せを優先すべきである。
  6. ヒトを対象とした医学研究の第一の目標は予防,診断および治療の進歩を計り,疾病の原因や発症機序を解明することである。その効果,影響,簡便さ,質などの絶えざる探求によって最高の予防,診断,治療を目標に挑戦し続けなければならない。
  7. 実地臨床においても,医学の研究においても,ほとんどすべての予防・診断・治療の過程には危険と侵襲は避けられない。
  8. 医学研究というものは,すべての人類の尊厳を高め,人類の健康と権利を擁護するような倫理規範に従うものでなければならない。研究対象集団というものは傷つき易く,特別な注意を要することがある。経済的にも医学的にも恵まれない人達の協力が特に必要であることを認識しなければならない。自分達では同意を拒否することもできない人達,同意を強要されている人達,その研究が自分の利益には結びつかないような人達,あるいは研究がそのヒトの医療と結びついているような人達に対しても,特別な注意が必要である。
  9. 研究者はこれが適用される国際的要請に対してばかりではなくヒトを対象とする研究に関する,自国の倫理的,法的ならびに規制当局の要請にも注意する必要がある。一国の倫理的,法律的あるいは当局の要請のみで,この宣言に述べられている被験者の擁護が十分でなかったり,排除されたりしてはならない。

B. 医学研究の基本原則

  1. 10. ヒトの生命,健康,プライバシーならびに尊厳を擁護するのは医学研究に携わる医師の義務である。
  2. 11. ヒトを対象とした医学研究は一般に認められている科学の原則に従うものでなければならず,科学論文その他の関連ある情報を十分に検討し,また十分な研究室実験,場合によっては,動物実験にも基づいたものでなければならない。
  3. 12. 研究の実施に際しては,その研究が周囲環境に与える影響についても適切に考慮すべきであり,研究に使われる動物の福利をも尊重すべきである。
  4. 13. ヒトを対象とした研究の実施計画は実験計画書に明示しなければならない。この計画書を特別に企画された倫理委員会に提出し,その判定,コメント,指導を得るようにしなければならない。また必要ならばその承認を得なければならない。この倫理委員会には研究に携わる人,依頼者ならびに利害関係者を含んではならない。
    この独立委員会はこの研究が行われる国の法律や規制に適合したものでなければならない。この委員会は実施中の研究について監視する権利をもつ。研究者はこの委員会に対して監視のための情報,特に重大な副作用についての情報を提供しなければならない。さらに研究者はこの委員会に対して,監視に必要な研究費の出所,依頼者・提携施設,起こりうる利害の衝突,被験者に対する報酬などについて情報を提供しなければならない。
  5. 14. 研究計画書には倫理的考慮についての文章を必ず記載しておかなければならない。すなわちヘルシンキ宣言に従ったものであることを示すべきである。
  6. 15. ヒトを対象とした医学研究は科学的有資格者のみによって実施すべきであり,臨床能力のある医師の監督の下に実施しなければならない。ヒトに対する責任は医師の資格のある者にあり,たとえ被験者が同意したとしても,その責任は医師にあり,被験者に責任を負わせることはできない。
  7. 16. ヒトを対象とした研究計画では,どんな場合でも,その被験者にとって予想される危険や侵襲と予想される利益との注意深い比較検討が必要である。このことは健康志願者を対象とした医学研究においても例外ではない。研究計画は一般の人にもよくわかるようなものでなければならない。
  8. 17. 研究に伴う危険が十分に理解でき,しかも十分にコントロールできるという確信がもてなければ,医師はヒトを対象とした研究計画に参加すべきではない。
    医師は,研究に伴う危険性が期待される利益よりも大きいと考えられる場合や,有益であるという確証がすでに得られている場合には,いかなる研究でも中止しなければならない。
  9. 18. ヒトを対象とした医学研究は,その目的の重要性が,被験者に起こりうる危険および侵襲を上回るものでなければ実施してはならない。このことは被験者が健康志願者であるときに,とに重要である。
  10. 19. 医学研究は対象となる人達が研究の結果から当然の利益を得られる可能性があるときにのみ許される。
  11. 20. 被験者は,この研究計画に対する志願者か,十分説明を受けてこれに参加する者かの,どちらかでなければならない。
  12. 21. 被験者が自分の尊厳を守る権利は常に尊重すべきである。被験者のプライバシーを尊重するように十分の注意を払わなければならない。また患者の秘密を守り,被験者の心身の尊厳や人格に及ぼす研究の影響を,できるだけ軽減するように心がけるべきである。
  13. 22. ヒトを対象とした研究においては,いかなる場合でもその候補者の一人一人に研究の目的,方法,費用の出所,起こりうる利害の衝突,研究者と研究との関係,研究から期待される利益と起こりうる危険,さらに起こりうる不快等についても十分な説明をしなければならない。被験者には,この研究への参加を中止する権利は保有されていること,いつでも参加への同意を撤回でき,そのための報復などはありえないことを説明しておかなければならない。被験者がこの情報を理解したことを確認した後で,医師はその被験者がインフォームドコンセント(納得したうえでの同意)をもらうべきである。書面による同意が得られないならば,書面によらない同意を得たことを,きちんと記録し,証人による証明を得ておかなければならない。
  14. 23. 研究計画へのインフォームドコンセントをもらう時には,医師は,その人が医師との間に従属関係のようなものは生じていないか,強制されて同意しているようなことはないか,等について十分注意する必要がある。もしもそのような懸念がある場合には,インフォームドコンセントは,事情をよく知っていて,しかも研究には携わらないことになっており,この研究とはまったく関係のない医師が同意をもらうようにすべきである。
  15. 24. 法的無能力者で身体的にも精神的にも同意提供能力のない者,あるいは法的に1人前ではない者については研究者はインフォームドコンセントを,適用する法律により法的資格があるとされている代理人からもらわなければならない。
    その研究が,その人口集団の健康増進に役立つか,あるいはその研究は法的能力者が代わりに行うことはできないという場合に限って,これらの人達を研究対象にすることができる。
  16. 25. たとえば小児の場合で,法的に無能力と考えられてはいるが,研究への参加について同意能力があると考えられる場合には,法的代理人の同意とともにその人からの同意も得る必要がある。
  17. 26. 代理人の同意であっても,また事前の同意であっても,同意能力のないヒトを対象とする研究は,インフォームドコンセントを得られないような身体的,精神的状況が研究対象集団に必然的な特性であるときにのみ実施することが許される。それが特別な研究でインフォームドコンセントを与えることができないような状況のヒトを対象としなければならないときには,研究計画書の中にそれについての考察と審査委員会の承認とを記載しておかなければならない。
    研究の同意がまだ得られていないときには,できるだけ速やかに,個々の被験者あるいは法定代理人から同意を得るということを研究計画書に記載しておかなければならない。
  18. 27. 論文執筆者も論文出版社も倫理的責任を負う。研究成果の刊行にあたっては,研究者は正確な報告をする義務がある。ポジティブな成績ばかりではなくネガティブな成績も論文に書くべきである。あるいは出版物をみられるようにしておくべきである。論文には研究費の出所,研究関連施設,可能性ある利害関係などについても明らかにしておくべきである。この宣言に記載された原則に則っていない研究報告は刊行してはならない。

C. 医療に関連した医学研究についてのその他の原則

  1. 28. 研究が疾病予防,診断あるいは治療に役立つ可能性がある場合に限って,医師はその医学研究を医療に応用することができる。しかし,そのような場合には被験者である患者を保護するために別の規制が必要となる。
  2. 29. 新しい方法については,その利点,危険性,侵襲,効果などが現在最善とされている予防法,診断法,治療法と比較して優れているかどうかについて検討しておかなければならない。予防法,診断法,治療法のいずれについても確実なものがない場合にはプラセボを用いてもよいし,また無治療の場合と比較してもよい。
  3. 30. 研究終了後には研究に参加した患者全員が,研究の結果示された最善の予防法,診断法,治療法を利用できるようにしておかなければならない。
  4. 31. 医師は患者に対して,研究と関連しているのは医療のどの部分であるかを,すべて知らせなければならない。患者が研究の参加を拒否したとしてもそのために患者-医師関係が損なわれるようなことがあってはならない。
  5. 32. 予防法,診断法,治療法などで確実なものがない場合,あるいは効果がないとされている場合でも,患者を治療するときには,患者からインフォームドコンセントを得ており,医師が,それが救命に役立ち,健康の回復あるいは,苦痛の軽減に役立つと判断するならば,まだ確実とはなっていなくても,あるいは新しい手段であっても,それを用いることが許される。できることなら,このような手段を研究の目標として,その安全性と有効性を評価するように企画をすることが望ましい。
    いずれの場合においても,新しい情報を記録に止め,それが適切と考えられるなら,論文として刊行すべきである。
    本宣言中のその他の関連条項についてもこれに従うべきである。

4. 患者の権利に関するリスボン宣言

  • 1981年9月ポルトガル,リスボンにおける第34回WMA総会で採択
  • 1995年9月インドネシア,バリ島における第47回WMA総会で修正

序文

医師および患者ならびにより広い社会との間の関係は,近年著しい変化を受けてきた.医師は,常に自らの良心に従って,また常に患者の最善の利益に従って行動すべきであると同時に,患者の自律性と正義を保証するために同等の努力を払わねばならない.以下に掲げる宣言は,医師が是認し,推進する患者の主要な権利のいくつかを述べたものである.医師,および医療従事者または医療組織は,この権利を認識し,擁護していく上で共同の責任を担っている.立法,政府の行動,あるいは他のいかなる行政や慣例であろうとも,患者の権利を否定する場合は,医師はこの権利を保証ないし回復させる適切な手段を講じなければならない.

人間を対象とした生物医学的研究-非治療的生物医学的研究を含む-との関連においては,被験者は通常の治療を受けている患者と同様の権利と配慮を受ける権利がある.

原則

  1. 良質の医療を受ける権利
    1. a. すべての人は,差別なしに適切な医療を受ける権利を有する.
    2. b. すべての患者は,いかなる外部干渉も受けずに自由に臨床上および倫理上の判断を行なうことを認識している医師からケアを受ける権利を有する.
    3. c. 患者は,常にその最善の利益に即して治療を受けるものとする.患者が受ける治療は,一般的に受け入れられた医学的原則に沿って行われるものとする.
    4. d. 医療の質の保証は,常にヘルスケアのひとつの要素でなければならない.特に医師は,医療の質の擁護者たる責任を担うべきである.
    5. e. 供給を限られた特定の治療に関して,それを必要とする患者間で選定を行わなければならない場合は,そのような患者はすべて治療を受けるための公平な選択手続きを受ける権利がある.その選択は,医学的基準に基づき,かつ差別なく行われなければならない.
    6. f. 患者は,ヘルスケアを継続して受ける権利を有する.医師は,医学的に必要とされるケアを行うにあたり,患者を治療する他のヘルスケア提供者と協力する責務を有する.医師は,現在と異なるケアを行うために患者に対して適切な援助と十分な機会を与えることができないならば,今までの治療が医学的に引き続き必要とされる限り,患者の治療を中断してはならない.
  2. 選択の自由の権利
    1. a. 患者は,民間,公的部門を問わず,担当の医師,病院,あるいは保健サービス機関を自由に選択し,また変更する権利を有する.
    2. b. 患者はいかなる治療段階においても,他の医師の意見を求める権利を有する.
  3. 自己決定の権利
    1. a. 患者は,自分自身に関わる自由な決定を行うための自己決定の権利を有する.医師は,患者に対してその決定のもたらす結果を知らせるものとする.
    2. b. 精神的に判断能力のある成人の患者は,いかなる診断上の手続きないし治療に対しても,同意を与えるかまたは差し控える権利を有する.患者は自分自身の決定を行う上で必要とされる情報を得る権利を有する.患者は,検査ないし治療の目的,その結果が意味すること,そして同意を控えることの意味について明確に理解すべきである.
    3. c. 患者は医学研究あるいは医学教育に参加することを拒絶する権利を有する.
  4. 意識のない患者
    1. a. 患者が意識がないか,あるいは自分の意思を表わすことができない場合,それが法的な問題に関わる場合は,法律上の権限を有する代理人から,可能な限り必ずインフォームド・コンセントを得なければならない.
    2. b. 法律上の権限を有する代理人がおらず,患者に対する医学的侵襲が緊急に必要とされる場合は,患者の同意があるものと推定する.ただし,その患者の事前の確固たる意思表示あるいは信念に基づいて,その状況における医学的侵襲に対し同意を拒絶することが明白であり,かつ疑いのない場合を除く.
    3. c. しかしながら,医師は自殺企図により意識を失っている患者の生命を救うよう常に努力すべきである.
  5. 法的無能力の患者
    1. a. 患者が未成年者あるいは法的無能力者であるならば,法的な問題に関わる場合には,法律上の権限を有する代理人の同意が必要とされる.その場合であっても,患者は自らの能力の可能最大限の範囲で意思決定を行わなければならない.
    2. b. 法的無能力の患者が合理的な判断をし得る場合,その意思決定は尊重されねばならず,かつ患者は法律上の権限を有する代理人に対する情報の開示を禁止する権利を有する.
    3. c. 患者の代理人で法律上の権限を有する者,あるいは患者から権限を与えられた者が,医師の立場から見て,患者の最善の利益に即して行っている治療を禁止する場合,医師は,関係する法律または他の規定により,決定に対して異議を申し立てるべきである.救急を要する場合,医師は患者の最善の利益に即して行動することを要する.
  6. 患者の意思に反する処置
    患者の意思に反する診断上の処置あるいは治療は,特別に法律が認めるか医の倫理の諸原則に合致する場合には,例外的な事例としてのみ行うことができる.
  7. 情報を得る権利
    1. a. 患者は,いかなる医療上の記録であろうと,そこに記載されている自己の情報を受ける権利を有し,また症状についての医学的事実を含む健康状態に関して十分な説明を受ける権利を有する.しかしながら,患者の記録に含まれる第三者についての機密情報は,その者の同意なくしては患者に与えてはならない.
    2. b. 例外的に,その情報が患者自身の生命あるいは健康に著しい危険をもたらす恐れがあると信ずるべき十分な理由がある場合は,情報は患者に対し与えなくともよい.
    3. c. 情報は,その患者をとりまく文化に適した方法で,かつ患者が理解できる方法で与えられなければならない.
    4. d. 患者は,他人の生命の保護に必要とされない限り,その明確な要求に基づき情報を知らされない権利を有する.
    5. e. 患者は,必要があれば自分に代わって情報を受ける人を選択する権利を有する.
  8. 機密保持を得る権利
    1. a. 患者の健康状態,症状,診断,予後および治療について身元を確認し得るあらゆる情報,ならびにその他個人のすべての情報は,患者の死後も機密は守られなければならない.ただし,患者の子孫には,自らの健康上のリスクに関わる情報を得る権利もあり得る.
    2. b. 機密情報は,患者が明確な同意を与えるか,あるいは法律に明確に規定されている場合に限り開示されることができる.情報は,患者が明らかに同意を与えていない場合は,厳密に「知る必要性need to know」に基づいてのみ,他のヘルスケア提供者に開示することができる.
    3. c. 身元を確認し得るあらゆる患者のデータは保護されねばならない.データの保護のために,その保管形態は適切になされなければならない.身元を確認し得るデータが導き出せるようなその人の人体を形成する物質も同様に保護されねばならない.
  9. 健康教育を受ける権利
    すべての人は,個人の健康と保健サービスの利用について,情報を与えられたうえでの選択が可能となるような健康教育を受ける権利がある.この教育には,健康的なライフスタイルや,疾病の予防および早期発見についての手法に関する情報が含まれていなければならない.健康に対するすべての人の自己責任が強調されるべきである.医師は教育的努力に積極的に関わっていく義務がある.
  10. 尊厳を得る権利
    1. a. 患者は,その文化観および価値観を尊重されるように,その尊厳とプライバシーを守る権利は,医療と医学教育の場において常に尊重されるものとする.
    2. b. 患者は,最新の医学知識に基づき苦痛の除去を受ける権利を有する.
    3. c. 患者は,人間的な終末期ケアを受ける権利を有し,またできる限り尊厳を保ち,かつ安楽に死を迎えるためのあらゆる可能な助力を与えられる権利を有する.
  11. 宗教的支援を受ける権利
    患者は,信仰する宗教の聖職者による支援を含む精神的,かつ道徳的慰問について諾否を決める権利を有する.

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