理事長挨拶

 2022年11月より日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会理事長を拝命しました武中篤でございます。これまでの本学会の発展を考えますと、大変光栄に存じますとともに身の引き締まる思いでございます。

 本学会は、1990年に「日本Endourology・ESWL学会」として設立され、内視鏡手術や尿路結石に対する体外衝撃波治療の発展、普及に貢献してまいりました。その後、主要な泌尿器科開放手術が体腔鏡下手術に移行するに伴い、2011年に「日本泌尿器内視鏡学会」と名称を変更いたしました。本学会にとって、直近のブレークスルーはロボット支援手術の導入でありました。現在、多くの良性・悪性疾患に対する泌尿器科腹腔鏡手術が、保険適用下に手術支援ロボットで施行可能となっております。言うまでもなく、泌尿器科は本邦におけるロボット支援手術のトップランナーであります。これに伴い2021年には学会名を「日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会」と改名し、刻々と進化するロボット支援手術が安全に施行できるよう制度を整備し、同時に教育活動にも力を入れてまいりました。このように本学会は常に様々なイノベーションを取り入れ、柔軟に形態を変えながら持続的発展を遂げてまいりました。現在の学会員数は約4600名であり、本邦の泌尿器科医の約半数が本学会に所属していることになります。

 我々泌尿器科医が患者様に安全、安心な最先端手術をお届けするには、「心・技・体の充実」が必要であります。言うまでもなく、手術の成功には「技」が必須であります。我々は、常に技術の研鑽に努める必要があり、学会としても様々な教育ツールを提供してまいりました。また、この「技」を多くの術者に伝承すること、つまり標準化を図ることが重要であり、そのために必要なものが「体」であります。「体」は『知識』と言い換える事ができるかと思います。十分な「体」を持ち合わせていれば、「技」はより高品質なものとなり、かつ標準的技術として普及することが可能となります。さらに、「技」を安全に実践するためには、「心」のコントロールが不可欠です。鬼手仏心という言葉があります。患者様を想う優しい心と何が起こっても動じない冷静な心、これらの気持ちをもって手術に臨むことが肝要であります。今後も、心・技・体の教育、普及活動に取り組んでまいりたいと思います。

 今後、本学会として最優先で取り組んでまいりたい事案は以下の通りです。
まず、泌尿器科腹腔鏡技術認定制度の運用についてであります。我々は2005年より本技術認定制度を立ち上げ、腹腔鏡手術の安全な普及に努めてまいりました。すでに約1800名余りの会員が認定医を取得しており、本制度は学会員の腹腔鏡手術の標準化、技術向上に大きな役割を果たしてまいりました。今後は腹腔鏡手術と共にロボット支援手術が低侵襲手術の大きな柱となることが予想されます。これらの状況を鑑み、本認定制度を時代の要請に沿ったものとし、より安全な低侵襲手術が提供できるよう努力してまいりたいと思います。
もう一点は、イノベーション教育の充実であります。先に述べたように、本学会は様々なイノベーションとともに発展を遂げてまいりました。これまでの歴史を振り返ると、10年から15年おきに新しいイノベーションが起こっています。医工連携による新たな医療機器開発は本学会に欠かすことはできません。学会員自らがこの領域の興味を持ち、新たな医療機器開発につながるような方法論や規則等について学ぶ機会を提供し、医療の発展に貢献してまいりたいと思います。

 以上、本邦の泌尿器内視鏡手術・腹腔鏡手術・ロボット支援手術などの低侵襲手術を安全に普及、発展させ、全ての患者様に安全・安心な治療を提供できるよう、引き続き努力してまいりたいと思います。何卒、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

2022年11月
一般社団法人日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会
理事長 武中 篤
(鳥取大学医学部器官制御外科学講座 腎泌尿器学分野 教授)